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「何なんだ今の質問は?」大谷翔平が会見中に“まさかのイラつき”…アメリカ人記者が明かす“世界のオオタニ”の意外な素顔

『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』より #1

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 本塁打王と2度目のMVPに輝き、プロスポーツ史上最高となる総額7億ドルで、ロサンゼルス・ドジャースに移籍した大谷翔平。名実ともに史上最高の野球選手は、どこまで進化を続けるのだろうか?

 ここでは、野球の母国・アメリカの記者たちが「大谷翔平」について語った『米番記者が見た大谷翔平 メジャー史上最高選手の実像』(朝日新書)より一部を抜粋。

 アメリカの日刊紙『ロサンゼルス・タイムズ』のスポーツコラムニスト、ディラン・ヘルナンデス氏と、アメリカのスポーツ専門サイト『ジ・アスレチック』の記者、サム・ブラム氏、アメリカ在住の日本人ジャーナリスト・志村朋哉氏の3人が、大谷翔平の素顔について語った内容を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く

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大谷翔平 ©文藝春秋

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素の大谷翔平

トモヤ クラブハウスなどフィールド外での大谷選手について、印象に残っているエピソードはある?

サム 彼がどんな人間で、どんなことを考えているのか、ほとんど明かしてくれないのは、逆に彼を興味深い人間にしている。多くのファンが大谷の人間性について何も知らないのは、彼がいかにメディアと話したり関わる機会が少ないかということ。でもファンの人たちは、大谷のプレーを見られれば、それで満足している。あれだけの活躍をしていれば、メディアに話そうが話すまいが関係ないからね。アンソニー・レンドーンのように怪我をしてほとんどプレーしていない選手の場合は、何も語らなければファンも気にするけど。

 エンゼルスを取材していて気づいたのは、いかに大谷がチームメイトに愛されているか。普通、大谷のようにメディアに対応しないで、代わりに周りが毎日のように大谷についての質問ばかりを受けるような状況だったら、嫌がる人も出てくると思う。でも、エンゼルスでの大谷に限って言えば、そんなことはなかった。それだけ周りが彼に敬意を持っているんだと思う。フィールドやベンチでの様子を見ていると、大谷はいつもジョークを言って楽しそうにしている。

 記者への接し方についていえば、彼は軽い挨拶をするような時ですら、タイミングを選んでいると感じる。普段は僕らが存在すらしていないような扱いだから。日本語で「こんにちは」と「さよなら」を学んで、彼が通りかかった時に使ってみたことがある。そしたら振り向いて笑い出したんだ。他の選手には近寄っていって普通に話すことができるけど、大谷はあまりにもちゃんと交流する機会がないから、そうしたわずかな人間同士としての交流にも感動したよ。大谷は選手なんかには普通の人として接するけど、僕らメディアとは、よほどのことがないと交流しようとはしない。

 だからこそ彼が接してくれた時は感動した。職業柄、普段から近くにいる野球選手を見て緊張したり特別な気持ちを抱いたりはしない。でも大谷が僕の「さよなら」という日本語を聞いて、「パーフェクト」と言った時は、「よし、彼を感心させたぞ!」と喜んだよ。

 大谷は謎めいていて理解するのが難しい。でも、彼の些細なやりとりを見ていると見えてくることもある。ルーカス・ジオリートがエンゼルスに移籍した時に、2人とも同じくらいの身長で、大谷がジオリートの身長を当てようとしているのを見た。確かジオリートが少し高かったのかな。セントルイスでラース・ヌートバーに聞いた話なんだけど、彼が大谷に「ランチを食べに行かないか」とテキストメッセージを送ったら、大谷は「寝ている」と答えたんだって。可笑しかったよ。だって、テキストメッセージに返信したってことは、起きているんだから。

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