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「屋台でシャブ売ってるくらい普通やっちゅうねん」かつて覚醒剤が“普通に買えた”ことも…大阪市のディープシティ「西成」には何がある?

『にっぽんダークサイド見聞録』より #2

2024/04/27

genre : ライフ, 社会

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「路上に立つ怪しげな人たちが見えた。覚醒剤などの違法薬物を販売している売人だった。まだ少年に見える売人もいた」…かつて覚醒剤が流通していたといわれる大阪市西成区。そこには一体どんな人が暮らし、どんな生活をしていたのか?

 1999年から同地を何度も訪れているルポライター・村田らむ氏の新刊『にっぽんダークサイド見聞録』(産業編集センター)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/#1#3を読む)

覚醒剤が普通に買えた1999年の西成の様子とは――。写真はイメージ ©getty

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大阪のドヤ街・西成

 知り合いの女性に頼まれて、大阪のドヤ街・西成をぐるり案内した。

 西成には年に何度も来ているし、今でもよく泊まる街なので懐かしいという気持ちはわかない。

 ただ場所の説明をしていると、初めて西成に来た頃のことを思い出してじんわりとノスタルジックな気持ちになってきた。

 僕がはじめて西成に行ったのは1999年だった。初の単行本『こじき大百科』の取材のためだった。世間知らずの僕は、それまで西成という存在を全く知らなかった。

 公園などでホームレスに話を聞いている時に、たびたび「なんだお前は西成を知らないのか? それでよくホームレスの取材をしているな」と馬鹿にされて、存在を知った。

「定期的に暴動が起きていた」

「昼間から酒を飲んでいる人が多数いる」

「路上で普通に覚醒剤を売っている」

 などというような、1999年当時としても耳を疑うような話を耳にした。

「これは行かねばなるまい」と、すぐに足を運んだのだ。

 新今宮駅で下車。国道43号線を超えると、街の雰囲気がガラッと変わった。小さい窓がたくさん並ぶドヤがずらり建っている。

 たまたま真夏に訪れたのだが、道には半裸の男性がバタバタと倒れていた。オウム真理教の毒ガス事件を思い出して、「なにか事件でも起きたのか?」と思ったが、道行く人は誰も気にしていない。日常風景だった。

 臭いも違う。抽象的な意味ではなく、本当に違う。歩いていると、たまに鼻にツンと刺激臭が刺さる。みんなが適当にそこいらで立ちションをしている。特に高架のトンネルなどからはひどい悪臭が漂っていた。

 倒れる人たちの横を野良犬がウロウロと何匹も歩いていた。当時、野良犬は群れで存在した。警察署の横にある通称四角公園ではホームレスが野良犬を餌付けしていた。

 ホームレスに話を聞いていて、「なんだとこの野郎!!」などとホームレスが大きな声を出すと、犬がザッと一斉に立ち上がって「ウー」とうなる。一心同体なのだ。そんな大量の犬に襲われたら絶対に勝てない。正直、暴力団の人と話をするよりも緊張した。

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