昭和の純喫茶や戦前の洋館、地方の遊郭跡なんかを愛でる文化というのがあって、主にインスタ方面で多くの人が活発に活動なさっている。おしゃれでセンスが良く、しかし浮ついていない真面目さにあふれており、でもスナックや「ちょんの間」街にも美を見出したりして結構さばけてます。

『名建築で昼食を 大阪編』は、そんな皆さんが大好きそうな番組です。ドラマ仕立てで、建築模型士の田口トモロヲと、広告代理店勤務(だがチャラチャラしてない)の池田エライザが、名建築をめぐり歩いて、そこで昼食を食べる。名建築というのは東大寺大仏殿とかではなく、古い洋館やビルや古民家。池袋の自由学園明日館とか御堂筋のガスビルとか中之島の中央公会堂とか。好き者なら誰でも知ってる有名なやつばっかりだが、それでも改めて見てみると「あー、こんなとこで昼食食べたい」と思うぐらいイイとは思える。

池田エライザ ©時事通信社

 というと、建築めぐり蘊蓄番組か、グルメ番組かといえばそうではない。そう見たっていいのだが、この番組を見ていると「それだけじゃない。我々のおしゃれさとセンスの良さをどうか味わってくれ」という執念みたいなものが、さりげない顔をしながらグイグイこちらに迫ってくる。

 これは「大阪編」であって、2年前には「東京編」もやった。エライザ・トモロヲコンビは変わらないが、場所が変わるのでチラホラと設定も新しくなっている。東京編ではエライザが別れた男から「ぬか床を預かるハメ」になり、大阪編ではエライザが親友(♀)の留守宅を預かって「亀の世話」をする。ぬか床! 亀! この界隈の「オシャレ」がどういうものか知り尽くしたようなセレクト!

 で、その親友の留守宅ってのも「団地リノベ」(古い団地の部屋をシンプルにリノベーションするってのが流行っているんです、ある種の人々に)のモデルルームみたいな部屋。生活感ぜんぜんないぞ! エライザもトモロヲも親友にも何かボンヤリしたドラマがあるっぽく描かれるが、それもオシャレな味つけ。トモロヲが「腹のたつ原因は相手じゃなくて自分にある」とかどっかのセミナーみたいなこと言うが、まあ雰囲気あるのでスルーしよう。

 東京編では行きつけの喫茶店のマスターが三上寛だ。大阪編の喫茶店のママは安奈淳。この人選も研ぎ澄まされた渋さとかっこよさ。

 大阪編までぶじ終わり、次やるとしたら名古屋編だと思うが、名古屋のどこをめぐるのかより、エライザが名古屋で何を託されることになるのか、そっちのほうが私は気になる。ぬか床、亀ときて、次は……氏神様のしめ縄当番とかどうだろう。喫茶店のマスターは鈴木慶一か。いや、週に1回しか開かない立ち飲み屋のオヤジがあがた森魚とか。

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source : 週刊文春 2022年10月13日号