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バクチにかけた男たち

100万円の負け→さらに300万円の負け→借金して作った500万円もゼロになりかけ…最後の30分に起きたミラクルが私をカジノ中毒にした

100万円の負け→さらに300万円の負け→借金して作った500万円もゼロになりかけ…最後の30分に起きたミラクルが私をカジノ中毒にした

『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』より#2

2024/04/25

genre : ライフ, 社会, 読書

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ジャンケットが誘うVIPルームの罠

 ラスベガスでもマカオでもどこのカジノでも、大勢の客が出入りする「ザラ場」(平場)と個室は棲みけがなされている。例えば「ウィン」や「MGM」といったホテルでは、巨大な1フロアがすべてカジノ場になっており、客はフロアを移動しながらポーカーやブラックジャック、バカラやルーレット、スロットマシンなどいくつものゲームを一日中いつでも楽しめる。

 上階のホテルに部屋を押さえておけば、すぐに下のフロアに下りてカジノを始めることができるし、疲れたら部屋に戻って仮眠を取ることもできる。その気になれば、24時間いつでもカジノを中心に時間をえるシステムになっている。

 ザラ場で何百万円、何千万円を賭けて大勝負をする客はそう多くはない。1香港ドル(約12・6円)から遊べるスロットマシンもあるため、そこで粘れば数千円で何時間も遊ぶことだってできる。

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 そうした観光客を目当てにしていては、カジノの収益はさして上がらない。ではどこでカネ儲けをしているのか。それは、VIPルームに上客を呼びこみ、高待遇をしながらどんどんカネを投入させるのだ。

 

 VIPルームとは、たいがいの場合、ホテルの上階にあるセミスイートルームやスイートルームのような場所だとイメージしてもらえばいい。VIP客の場合、入り口も駐車場もほかの客とは別の場所に設置されている。専用スペースにクルマを停め、専用エレベーターで人目につかないように部屋に直行できる。

 なるべく人目につかないよう考え抜かれた動線を確保し、部屋に入るときも出るときもプライバシーを保っている。ほかの客がワイワイ騒ぐ声も聞こえない中、自専用の部屋でゆったりカジノを楽しめる。これがVIPルームだと言えば、わかりやすいかもしれない。

 賭け金が小さいザラ場は、いわばブティックにおけるショーウィンドウのようなものだ。芸能人や有名実業家であれば、なおのこと人目につかないところで勝負したがるものだ。そうした人々を大金が動く別室に囲いこみながら、カジノは大きな収益を上げているのだ。

100万円の負け→さらに300万円の負け→借金して作った500万円もゼロになりかけ…最後の30分に起きたミラクルが私をカジノ中毒にした

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