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「どうにか負けを埋め合わせないと…」大王製紙子会社からの借金は10億円を超えタネ銭もない…窮地の私が思いついた3000万円のカネをすぐに作る方法

「どうにか負けを埋め合わせないと…」大王製紙子会社からの借金は10億円を超えタネ銭もない…窮地の私が思いついた3000万円のカネをすぐに作る方法

『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』#3より

2024/04/25

genre : ライフ, 社会, 読書

note

ギャンブル好きが考える「女房を質に入れてでも」

 香港やマカオでわれている広東語では、「押」の一字が日本で言う「質屋」を意味する。マカオへ向かう道すがら、街中では「押」の字があちこちで見受けられた。昔から「女房を質に入れてでも」という物騒な言い方があるが、ギャンブル好きが考えることは古今東西一緒なのだろう。

 香港やマカオの質屋は、ギャンブラーにとってはおそるべき魔窟のような機能を果たしてくれた。もちろん専業の質屋もあるのだが、質屋兼商店の兼業店もある。クレジットカードを使い、翡翠でできた置き物や高級時計を購入したことにする。100万円の買い物をしたとして、店はクレジットカード会社に数%の手数料を取られてしまう。その手数料に加えてさらに店側の手数料を差し引いて、商品のかわりに90何万円かのキャッシュを渡してくれるのだ。つまり、買った商品を瞬間的に質入れしてくれるというわけである。

 香港の質屋では、ダイナースとアメックスのクレジットカードを出すとあからさまに嫌な顔をされた。ダイナースとアメックスはやたらと高い手数料を取るからだ。私がクレジットカードを出そうとすると、手数料が安いVISAはないのかとよく聞かれたものだ。

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 カジノホテルでクレジットカードを使い、いくらかの現金をキャッシングすることはできる。だが、キャッシングはどのクレジットカードでも100万円程度、多くてもせいぜい150万円かそこらだ。これではカジノでの種銭としては少なすぎる。

 そこでホテルの外にある質屋兼商店が、事実上のカネ貸し業者として役立った。例えば私が400万円の商品を買ったとしよう。店側は自分たちの手数料を3%乗せて、412万円くらいの伝票を起票する。12万円が店側の純利益となる。

 そして、クレジットカード会社の手数料数%を引いた400万円弱の現金が私に手渡される。412万円を回収できるかどうかはクレジットカード会社の問題だから、店側はカネを取りっぱぐれる心配がない。店側にとってはノーリスクのうまい商売なのだろう。

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 今思い返してみると自でも感覚が狂っていたと思うが、質屋を偽装したカネ貸し店に出向き、アメックスのクレジットカードで合計2000万円もの買い物をしたことがある。